役に立つか立たないかはその時ではわからないことが多い。かなり回り道していろいろ経験して、それがあとで活用できるようになるというケースの方が多い。最初から「○○の役に立つから!」とかそんな明確な目的でやったりすることの方が少ない。

「なんの役に立つんですか?」の暴力性 – MoriyamaMoriko – – 森山森子
http://d.hatena.ne.jp/m0612/20100414/p1

テレビで魚に右利き左利きがあることを発見した教授が出ていたらしく、エサを取るのに右にばかり曲がる魚がいて、そういう魚を干物にすると、右利きは右に曲がって干からび、左利きは左に曲がって干からびる、つまり骨格から利きが決まっているらしい、というところから話が始まる。で、アナウンサーが苦笑して「なんの役に立つんですか?」という愚かな質問をしてしまっていた、というのが導入部。ここから反論が始まるがなかなか興味深い。

うーん。「なんの役に立つんですか?」という言葉は、実はいろんなことに投げかけられている。「マンガなんて読んで、なんの役に立つの?」「宇宙なんて研究して、なんの役に立つの?」「絵画なんて観て、なんの役に立つの?」大衆にとってもっとも価値があるのは「利便性」だ。「利便性>娯楽性>芸術性」という順番こそが大衆性であり、情報番組はだから好まれるし、「人の役に立つ人間になりたいです」と子供に言わせる。それは文明というもの、科学というものの恩恵をうけてきた人間らしい言葉であるし、考え方だろうけれど、そもそもその文明や科学を、さも人間が意図して手に入れてきて、「役に立つ」ということを目指してきたと考えること自体が大きな間違いなのだ。「人の役に立つぞ!」って研究者ががんばって研究したから科学技術が発達したと思うのは大間違い。文明というものは人間の純粋な好奇心による知的探求から結果的に生じたおまけ、なんだったら排泄物でしかない。真理を追究していたら、偶然にも文明がいっしょにぽろっと現れて、それの恩恵を人が受けている、それだけである。

で、ここからあとの具体例がかなり納得できる。

ニュートンは別に、工学に役立てるために運動方程式や、万有引力を発見したわけではないし、コペルニクスも宇宙旅行のために地動説を発見したわけじゃない。だから「役に立つ」ということを目標にしても、将来の進歩に結びつくわけじゃないし、「これを知りたい!」という単純だけど強い強い好奇心によって自分勝手に動く研究者のほうがずっと粘り強く、結果的に(本人の意思とは関係ないところで)進歩に貢献するものだ。科学には基礎科学と応用科学というものがあって、基礎科学は簡単に言えば物理だとか化学だとか、生物だとか、地学とか、根本的な真理を探究することが仕事だ。応用科学はそこで見つかった真理を応用し、実用化するのが仕事。医学とか薬学とか工学とか農学がここに当てはまる。テレビでも別の研究者さんが、役に立つかどうかなんて事は自分にはどうでもよくて、それはまた別の人が考えること、とおっしゃっていて、基礎科学の人間にとって、発見したことを実用化するかどうかなんてのは管轄外でしかない。しかも、その真理が発見した同じ時期に必要とされる技術になるかはわからない。

コレは別にこういう科学以外でも言えるんじゃないかと思う。もし無駄なコトということであらゆるものを今すぐ役に立つものと立たないものとに分類してしまうのであれば、一体今何をすればいいのかってことになってしまいかねないし、そんな風にして目先の物事のことだけに執着していると、必ず行き詰まる。自分の中の引き出しの数を山のように増やしておくのが肝心で、それが適応する力とか、応用する力とかに結びつく気がする。

個人的にはこういう「それって何の役に立つのw」みたいなことを言う輩にはこの台詞を言うことにしている。

奥さん、生まれたばかりの赤ん坊が何かの役に立つとお思いですか? – 瀧澤美奈子の言の葉・パレット
http://blog.goo.ne.jp/minacraft/e/2d6426dfa923f007ece489f1ba052a4e

 今から180年ほど前、マイケル・ファラデーが電磁誘導を発見しました。
電磁誘導によって発電が可能になったわけですから、私たちは計り知れない恩恵を受けているわけです。しかしそのことは当時、かならずしも自明なことではありませんでした。
 ファラデーは、定期的に一般向けの講演を行っていて、一般大衆の前でその物理現象をデモンストレーションしてみせました。
 すると、その日の講義の最後に、ひとりの女性が質問しました。
「ですが、ファラデーさん。磁石をつかって、ほんの一瞬、電気を起こしてみても、何の役に立つのでしょうか?」
 ファラデーは、礼儀正しく言いました。

「奥さん、生まれたばかりの赤ん坊が、何かの役に立つと思われますか」

たぶん勉強とかもこういうコトなんだと思う。

こちらの記事もどうぞ