というわけで、矢野ヒカルです。

4月の13日に部内でテーマ小説をしましたので、その優勝者を発表したいと思います。



その前にテーマ小説とは…
1つテーマを決めて、それに沿った話を書く。というものです。

今回のテーマは【飛行機】でした。



さて、本題の優勝者は…

奏音でした!!!

さあ、これからは奏音の小説を特別に公開したいと思います(本人に許可は取ってます)

「なぁ、やめておけよ」
職業柄、自ら見知らぬ一般女性に話しかけることは、はばかられた。それでも口を開いたのは、おれが根っからのお人好しだったからである。
 その女は三十がらみの美人で、おれと通路をはさんでとなりの座席に腰を下ろしていた。今朝東京を出発した飛行機で偶然乗り合わせただけの、自分にはまったく関係のないひとだ。彼女はひとりでここにいるようで、じっと座ったまま何やら深刻な表情を見せていた。
 おれが彼女に注意を向けるようになったのは、彼女の持ちこんできた荷物の量があまりにも少量だったためである。ハワイに行くにしては、いささかおかしい。旅行ではないのだろうか。
 訝る点は他にもある。
 女はときおり白いふうとうを胸ポケットから出しては、それをながめていた。泣き笑いのような表情を浮かべ、それを再びポケットに戻す。もうすでに十回以上もその動作を繰り返していた。
 女はおれが声をかけたことに、気づくようすがない。俺は彼女の肩を叩き、さらに告げた。
「おい。あんたのことを言ってんだよ、おばさん」
「お、おばさん!?」
 女は目を丸くしてこちらを見た。十七歳のおれからの視点では、彼女は立派なおばさんである。おれは可能な限り、穏和な笑みを作った。
「変な考えは起こさない方がいい。おれだって、あんたと同じことをしようと思ったことがあるが、やめた。いや、できなかったんだ。」
「な、何のことよ」
「とぼけんな。おれにはすべて、わかってるんだよ」
 そう訴えて、おれは相手に鋭い視線を送った。
 女は怪訝そうに眉根を寄せて、うでを組み、口を閉ざした。
「おばさん、おれよりも長く生きてんなら、知ってるだろ。ダメなことはダメだって」
「あなた、どうして……」
「どうして、おばさんのしようとしてることが推測できたか、って?」
「ええ」女は首を縦に振り肯定した。
「カンタンだ。まず不思議に感じたのは、あんたの荷物が少なすぎたことだ。あんたははなから、家に帰る気がなかったんだろう。
だから、それだけの荷物で済んだ。
 では、なぜ帰る気がないのか。
 それは、あんたの暗い顔と、服装で推理できる。おばさんさ、
なんで真夏の東京から出てきたのに、そんな暑そうな長袖のシャツを着てるわけ?」
「そ、それは…」
「さっき、暑苦しそうな顔して、袖をまくろうとして、すぐやめたでしょ。あのとき見えたんだ。あんたは何度も、手首を切っている。ずっと暗い顔をしてたのも、あんたは心に病を持っているからだ。」
 おれはさらに声を低くした。女はくちびるを噛みしめ、こちらをにらみつけている。餓鬼に何が理解できるのよ、と言いたげな顔だ。おれは彼女の意向をいっさい無視し、毅然とした態度を取り続ける。
「なぁ。もう一度言う。やめろ」
「嫌よ!もう決めたのよ!」
 本気でさけぶ女。無表情のおれ。
「そんな遺書まで用意して、死んだって誰も喜ばねえよ。大体、
死ぬためにハワイ行く余裕あるなら、意地でも生きろっつーの」
「あなたはいいわよ。超有名俳優さんですものね」
「おばさん、おれを知ってるの」
「ええ。実は結構ファンだったの」
 女は遠い過去を想起するようにして、目を少しばかり細めた。
おれは確かに、俳優である。今回も映画の撮影のために、ハワイを訪れる予定であった。
 おれはほっと息をつき、天上を仰いだ。
「じゃあ、なおさらだ。何があったか知らんが、死ぬな。貴重なファンを失いたくない。おれだって、仕事がつらくて死にたいと思うことだっていっぱいある。でも、そのたびに乗り越えてるんだ」
「わたし…わたし、もう帰れないわ。」
 女はかぶりを振った。
「おれがなんとかしてやる。金なら払ってやるから。戻ってもすることないなら、テレビ局で仕事を見つけてやる。おれは顔が広いし、権力があるから、心配ない」
 まっすぐと相手を見据える。
 しばらく沈黙の時があたりを包んだが、しぶとく待ち続ける。
 ほどなくして、女はおれを見つめ、うなずいた。
 その表情は、非常に明るく、こちらも心が救われるような気がした。
 おれと彼女は、同時にくすくすと笑い声を上げた。



どうでしたか?

ヒカルの感想は、やはり奏音はすごいですね。と思いました。
1時間ぐらいで完成させるとは…



というわけで、第一回報道部テーマ小説人気投票優勝者発表でした。
第2回をお楽しみに!