というわけで、もうすぐ部長引退のkagaminです。

本日、4月19日に部内でテーマ小説を行ないました。

 

今回はその優勝者発表と共にその優勝作品を完全公開!
その前にテーマ小説とは…
1つテーマを決めて、それに沿った話を書く。というものです。

 

第二回のテーマは「のろい」でした。

 

 

早速ですが、第二回テーマ小説の優勝者は…

 

 

奏音!!

 

奏音先生二連覇です。

 

 

というわけで、参りましょうその作品を公開!

 

というわけで、以下本文です。

 

2012.04.19 第二回テーマ小説 「のろい」  奏音

パイプ椅子の背もたれに深くもたれかかり、天上を仰ぎながら笹々峰は告げる。

「今朝は、本当にたいへんだったわ。登校中なんだけどね、一歩進むたびに右足の靴が脱げそうになるの」

 苦労話をしているつもりであろうが、その口ぶりは非常に明るい。

 世喜良市立第七中学校の書庫を、現在俺と笹々峰深音のふたりが占領している。放課後に、文芸部の活動を行うために集まっているのだ。別段大した活動はせずに、いつも主に雑談をして時間を過ごしている。今日もそうだった。

 俺はあくびをかみ殺してから、笹々峰に視線を送り、軽い調子で言葉を返した。

「そりゃたいへんだったな。でもどうして、そうなったの」

「家を出て十分…十五分くらい経ったときかな。靴ひもが急にちぎれちゃって。ちぎれた部分を結んでつなぎ合わせたら、ひもが短くなりすぎて、いちばん上で蝶々結びができないわけよ。だからといって、下のほうで蝶々結びするのも変だし、結ばなかったら靴が脱げちゃう…。」

「結局どうしたんだ」

 いつしか笹々峰の話に引き込まれていた俺は、思わず訊ねた。

 笹々峰はぱっと華やかな笑みを浮かべ、両手を合わせて返答する。

「あたしが困ってたらさ、ちょうど歌川くんが通りかかってね。助けてくれたの」

 彼女の言う歌川というのは、俺のクラスメイトの少年である。

常に世の中のすべてを見通したような無表情で、決して誰とも関わらない。顔立ちが端正すぎるあまりに、少女のように見えることもある。髪は少し長めで、いつもそれを後頭部で一つにまとめている。俺は歌川が嫌いだ。奴は澄ました顔をして、他人を見下しているのだ。

 笹々峰はさらに目を輝かせる。

「ほんと、助かったわ。あんたと違って、優しい男の子もいるのね」

 気に食わん。俺様は超がつくほどの親切人間だぜ?

 不満を覚えた俺は、眉をしかめ、うでを組んだ。そして、ふてくされたような口調で言う。

「話は、それで終わりか、笹々峰」

「もうなによ、あんた。わかりやすい奴ね。あたしがあんた以外の男の話をするたびに、そうやって不機嫌になるんだから」

 笹々峰はこちらとは対照的に、満ち足りた表情を見せている。それに嫌気がさした俺は、そっぽを向き、口を閉ざした。自分でも自覚している。俺はかなり単純明快な性格だ。俺が笹々峰に特別な好意を寄せていることを、彼女も簡単に悟るほどである。承知していながらも、笹々峰は俺が本気で想いを伝えるたびに、冗談だといってはぐらかされてしまうのだった。

 笹々峰がこちらの気持ちを察したのか、突如、話題を転換させる。

「そういえばさ、さっき、呪いの幽霊を目撃しちゃったの。ほら、学校の七不思議の一つにあるでしょう。校舎の四階の廊下を歩く、体操服を着た少女の幽霊がいるってやつよ。たしか、いじめで自殺しちゃった女の子よね」

「あ、そういえば、六時間目は体育だったよ。」

「そんなの、今の話と関係ないでしょ。…ほらさ、この学校、四階の利用者はあたしたちしかいないじゃない。あれは、絶対幽霊ね」

 笹々峰は力説した。

 あいにくだが、俺は神秘的なものを信じてはいない。これには何らかの真相が潜んでいる。しかし、四階に足を運ぶ人がいないのは、まぎれもない事実。

 そのとき、ふと脳裏にある可能性が浮かび上がった。

 俺は大きく目を見開き、笹々峰の丸い目を見つめた。

「―なぁ、笹々峰。話戻るけどさ、靴ひもって、輪ゴムを使って応急処置したのか」

「え、ええ。そうよ。ちぎれたところをつなげたの」

「やっぱりな。その輪ゴムって、あれだろ?歌川が髪をまとめるのに使ってるやつ」

「うん。…あっ!」

 とつぜん、彼女は目を丸くした。

 俺は含み笑いを浮かべる。

「そうだ、俺と歌川はクラスメイトだ。今日の最後の授業は体育だった。着替えるのも面倒だからって、そのまま体操服を着てたとしたら、どうだろう。彼は髪が少し長い。彼のうしろ姿を見て、笹々峰は幽霊だと勘違いしたんだ」

「なるほどね。でも、どうして歌川くん、四階にいたんだろう?」

「そりゃあ…なんていうか、あれだ。誰も使っていない教室で、ひとりで好き放題するのが、あいつの趣味だからさ」

 俺は知っていた。歌川は頻繁に、ここのとなりの教室に訪れているということを。そして、たったひとりで時間を過ごしているのだ。他人に頼らなければ生きていけない俺とはあまりにも異なっている。その点が、性に合わないのだ。

 笹々峰は机にほおづえをつき、ほっと息をつく。

「でも、幽霊がいたほうが、世の中おもしろいのにね」