2011/03/12、3時半頃、炉心の燃料棒が溶融し始めたと思われていた福島第一原子力発電所において、1号基建屋の外壁が直下型の振動と灰色の爆煙ともに失われましたが、原子炉の中心部の圧力容器ないしは格納容器に損傷はないことが枝野官房長官から発表されました。
「……で、そもそも圧力容器ないしは格納容器って何?」思っている人も少なくないだろうと思うので原子炉について説明します。
【原子炉】
核分裂連鎖反応 を維持・制御する装置。一般的には原子炉圧力容器 及び原子炉圧力容器の内容物(燃料、炉内構造物 など)を指す。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
「【核融合】とかなかったっけ?」と思っている人もいるかもしれませんが、核融合炉はまだ実験段階で発電用には2011年現在、用いられてはいません。
原子炉内では、ウラン原子核に高速の中性子が衝突し、原子と高速の中性子が幾つかずつに分裂しまたその中性子がウラン原子核に……とこのような反応が連鎖的に起こっています。この反応の過程でウラン1gを完全に核分裂させると約8.2×10の10乗ジュールの熱を発生させることができます。ちなみにこの熱を全て使うと、おそらく2.2×10の5乗kgの10℃の水を熱湯にできるはずです。あくまで僕自身が行った計算ですので信用なさらない方がいいかと思います。原子力発電所ではこの熱を持続的に取りだしてこの熱で水を沸騰させ、その水蒸気でタービンを回転させ、その力で発電機を動かして発電しているのです。
簡単に言うと、「やかんの中に熱い石を入れて水を沸騰させ、蒸気でくるくると風車を回して発電するようなもの。」
(報道部OBの方の話を引用させていただきました。)
続いて原子炉を構成するものについて。
【燃料棒】
燃料ペレット を積み重ねて被覆管に挿入し、両端に端栓を溶接して、ペレットを密封したもの。ペレットと被覆管の間には、適切な隙間を設けるとともに、核分裂生成ガスを収容するための空間(プレナム)が設けられている。外径は軽水炉 用9.5~14.5mm、重水炉用13~16.5mm、高速増殖炉 用6~8.5mmなどさまざまである。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
【被服管】
燃料被覆管(ねんりょうひふくかん、Fuel tube)はジルコニウム合金で出来た、厚さ2mm、直径1cm強で、長さが約4mのきわめて細長い形状の管である。被覆管は運転中に発生する核分裂生成物(FP)を外部に漏らさないために運転中のあらゆる条件下、及び想定される事故の環境下で健全性を保つ必要がある。また内部の核分裂物質は原子核分裂に伴う崩壊熱を放出しているため、高温に耐え、かつ冷却材に熱がよく伝わるように熱伝導率の高い物質で無ければならない。冷却材と反応して健全性を損なうことの無いように、安定した物質であることも重要である。さらに燃料ペレットは運転中の温度変化や、生成した核分裂生成物(FP)による膨張つまり「スエリング」や、縮小つまり「焼きしまり」といった体積変化を起こすため、燃料被覆管に局所的な応力を発生させる。これらの応力に耐えて、また原子炉運転中の震動等に耐える機械的な強度を持たせる必要がある。(Wikipedia参照)
今回の福島第一原子力発電所では、これが過熱し溶融したと推測されています。
【燃料ペレット】
二酸化ウラン(UO2) などの粉末状の核分裂性物質 を圧縮焼結して、円柱状のセラミックス質にしたもの。積み重ねて被覆管に挿入したものを燃料棒 という。ペレット1つの寸法は炉型によって異なるが、おおむね直径約1cm、長さ約1cmである。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
【制御棒】
原子炉内に出し入れして原子炉の出力を制御するためのもの。材料には中性子吸収効果の大きいほう素(B)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)などが用いられる。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
【原子炉圧力容器】
BWRにおいて、核燃料、炉内構造物 、減速材及び冷却材 など原子炉の主要構成材料を収納し、その中で核分裂 のエネルギーを発生させる容器。この中で、加熱された給水は蒸気となって、蒸気タービン に送られる。出力110万キロワット(kW)級での原子炉圧力容器は、高さ約22m、内径約6.6m、重量約750トン(t)である。PWRでは原子炉容器(RV) と称する。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
今回の福島第一原子力発電所ではこの内部の冷却用の水が、原子炉圧力容器内部に制御棒が挿入された後にも残り続ける熱で蒸発して燃料棒が冷却水から出てしまい、炉心溶融に至りました。
【原子炉格納容器】
原子炉、原子炉冷却設備 、及びその関連設備を格納する容器。原子炉冷却材喪失 時などに圧力障壁となり、かつ放射性物質の放散に対する障壁を形成するもので、鋼製、プレストレストコンクリート製(内面ライナ張り)、鉄筋コンクリート製(内面ライナ張り)の形式がある。出力120万キロワット(kW)級のPWRでのプレストレストコンクリート製格納容器は、上部が半球形で胴部は円筒形であり、主要寸法は、内径約43m、高さ約66mである。一方、出力110万キロワット(kW)級のBWRでの鋼製格納容器は上部円錐台形、下部のサプレッションプール部は円筒形で、この円筒部の直径は約29m、全高は約48mである。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
【非常用炉心冷却装置(ECCS:Emergency Core Cooling System)】
原子炉に冷却材喪失が起こった時などに、炉心を冷却するための工学的安全施設 。1次冷却系のいかなる大きさの配管が壊れた場合にも炉心を冷却できる容量を有している。BWRでは非常用炉心冷却系といい、高圧炉心スプレイ系 、低圧炉心スプレイ系 、低圧注水系 、自動減圧系 などから成る。PWRの場合には、高圧注入系 、蓄圧注入系 、低圧注入系 などから成っている。なお、原子炉冷却材喪失 が起こらなくても、PWRでの主蒸気管破断事故に対しては原子炉を停止させるようにほう酸水を注入することも行う。(経済産業省原子力安全・保安院Home page参照)
【ホウ酸水】
ホウ素の同位体のうち、10Bは非常に大きな中性子吸収断面積を持つため、原子炉内において中性子の吸収のため制御棒に、その化合物であるホウ酸は一次冷却水に溶かし込んで加圧水型原子炉の余剰反応度制御に使われる。同様の理由で、微量のホウ素添加を行った金属による放射性物質運搬容器も使用されている。(Wikipedia参照)
一旦ここで終了します。