むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました
という書き出しで始まる昔話に対し、私は異論を唱えたい。
と、ずっと思っていた。
その気持ちは、変わらない。
レイさんの自伝より抜粋
レイさんが前に立ち、堂々と口にした。
「会議を始める。【むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました】という思想を共に打ち砕こう」
読者諸君は私たちを暇人と罵るかもしれない。正解だ。愚かな回答者の貴様らに花マルをくれてやろう。
「【むかしむかし】と反復法を使うことは個人的に言いと思うのであるが…」
いきなり切り出した知能派気取りの野郎は、意外とピュアな樋上である。【である】が多いのは気にしない。
「たしかにそうなんだが、何か違うような気がする」
レイさんは樋上の意見を優しく却下した。
「アレだな。【むかし】を漢字表記にして、文末に持っていったらいいんじゃね」
「嫌だけど」
レイさんは九条の意見を優しく却下した。九条は色露学園変人グランプリの4年連続の覇者である。
「はいはーい!!」
無邪気に草谷が手を挙げる。
「どうした?フー?」
フーは彼女の愛称である。
「【むかし】を漢字表記にして、体言止めとかを効果的に使ったらいいと思うよー」
何たる名案、さすが我が部活の紅一点である。
訂正しよう。紅二点の一角である。蛇ににらまれたカスのごとく私は意見を覆した。レイさんは怖い。ただそれだけの、ことである。
現状:おじいさんとおばあさんが、あるところにいる昔
「【おじいさんとおばあさん】のところを変えたいな」
さらにレイさんが続ける。
「【おじいさん】は翁にして、【おばあさん】は媼にすればいいかと」
副部長、橋本の頭のよさそうな発言だ。レイさんのカウンター発動!
「翁は良いとして、媼はな。漢字書けない人も多そうだし」
さりげない優しさ。これぞレイさんである。
「じゃあ媼はやめて、肉落ち骨秀で、眼光のみいたずらに炯々とした老婆は?」
テッテレー【おばあさん】の攻撃力が3倍になった。
「最高だ」
現状:翁と肉落ち骨秀で、眼光のみいたずらに炯々とした老婆が、あるところにいる昔
殆ど老婆の説明になってしまったな。
そこで、問題発生である。
この話の行く末はどこだ?
「私たちで新たな昔話を作るんだよ」
美少女にも美少年にも見えるレイさんが言い切った。
これから、私たちの戦いが始まった。
つづく
あとがき
こんばんは。泣きそうな矢野ヒカルです。
キャラが多くて死にそうになってきました。
ここからが踏ん張りどころです。
頑張ります。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。
