現在、週にだいたい4本は放送されている二時間サスペンスドラマ、通称「2サス」を見ては感想を吐く連続企画の1回目(予定)。
2サスとは「殺人事件を起こした犯人を主人公らが捜し出す」を主軸に据えたドラマと表現して間違いない。「相棒」「科捜研の女」のような1時間枠で放送されているものとの違いは、ほぼ必ず殺人事件が発生すること(誰が犯人かわからずに不安な心理を抱く=サスペンスの本義)。ドラマの展開として、必ずしも主人公は警察関係者とは限らず、探偵や弁護士、新聞記者、果ては葬儀屋なんてケースもある。
原作アリのもの、なしのものは両方あるが、松本清張や山村美紗、西村京太郎、内田康夫らの作品がよく原作として用いられている。現在の主放送枠は、TBS系列の月曜ゴールデン、テレビ東京系列の水曜ミステリー9、フジテレビ系列の金曜プレステージ、テレビ朝日系列の土曜ワイド劇場と週4本。
1月28日の月曜ゴールデンで放送されたのは小池栄子主演、「捜査指揮官 水城さや」。小池演じる水城さやは、警視庁捜査一課で唯一の女性管理官であり、30歳と最年少でもあるというキャラクター。上司である捜査一課の菱沼理事官(演:林泰文)とは衝突しつつ、捜査一課長の葉山(伊武雅刀)からはフォローを受けて、事件に挑んでいく。
2サス慣れすると、まずこの主役で不安になる。そもそも小池栄子は2サスの主役どころか、出演経験自体が浅い。警察の管理官ポジションは、ドラマ「踊る大捜査線」の最初のシリーズで柳葉敏郎演じる室井慎次のついていた役職であり、「科捜研の女」では戸田菜穂が演じている重要な役所。そこに女優というかタレントというか微妙な人が置かれても、役に演者がついてこない。これは、「相棒」であれば水谷豊のところに及川光博を置いてドラマが進むか、というぐらいの話。「最年少女性管理官」というのも相当なファンタジーについては、2サスワールドには勝手に事件捜査を始める葬儀屋とか温泉女将もいるので突っ込まない。
で、さすがに制作側も「小池栄子管理官じゃ軽すぎる」というのはわかっているので脇役を固めてきた。それが、補佐役の杉本哲太と北川弘美であり、上司の伊武雅刀と林泰文であり、所轄刑事の本田博太郎(品川署刑事課強行犯係)だ。さらに、捜査会議でぶつかる捜査二課係長に佐戸井けん太を入れて、ライバルポジションに岩崎ひろみを置いた。
メインの女優が弱いから、ドラマ力(どらまちから)を高めるために2サス慣れしたメンツで固める。この狙いは間違ってはいないが、このドラマには「力のあるホン」も欠けていた。
管理官はキャリア組、いわゆるたたき上げの刑事たちとは違う道を上がってきた人なわけだが、小池はかなり熱血系管理官らしく、「大規模詐欺事件の犯人を引っ張るためだから別件逮捕でもかまわない」とこの事件の公判を維持できなさそうなことをさらっと言うし、何度も手錠のことを「ワッパ」呼ばわりする。キャリアだがたたき上げたちの気持ちも汲めるキャラクターとして造形したかったのだろうが、小池の演技力も相まって、なんともいえないただのバカ管理官になってしまった。PCのパスワードのことを「暗証番号」と言わせてしまう脚本も、キャラクターのバカっぷりに磨きをかける結果につながっている。警察側よりも犯人サイドのキャスティングの方が多い林泰文が上司というのも、ドラマ力を下げている。。
サスペンス“ドラマ”なんだから、キャラクターがまったく実在しなさそうでもかまわない。しかし、そもそも魅力に欠けるキャラクターでは、今後シリーズとして成功していくのは難しいのではなかろうか。
なお、実況スレッドでは小池栄子が走るたびに「おっぱい揺れた!」と好評だった模様。ある意味で視聴率は稼げているので、当たりといえば当たりなのか。