もうひとつの京都。そこで起こる出来事は奇怪なことばかり。
けれども、それらは記憶をすり抜け、人々は毎日を平凡に暮らしている。
そう、「彼」以外は……。
今回は、「深泥丘奇談」(綾辻行人著)を紹介します。
↑「深泥丘奇談」
↑「深泥丘奇談・続」
○作者について
綾辻行人(1960年~)
島田荘司にペンネームをつけてもらい、
1987年、「十角館の殺人」でデビュー。この時京都大学在学中。
1992年、「時計館の殺人」で日本推理作家協会賞長編部門を受賞。
現在作家の小野不由美と結婚中。
「館シリーズ」「囁きシリーズ」「殺人方程式シリーズ」「殺人鬼シリーズ」「Another」
など多数のシリーズを執筆中。
○作品について
2008年、「深泥丘奇談(みどろがおかきだん)」がメディアファクトリー幽ブックスより出版。
短編集。
収録作品:顔 / 丘の向こう / 長引く雨 / 悪霊憑き / サムザムシ / 開けるな / 六山の夜 / 深泥丘魔術団 / 声
2011年、「深泥丘奇談・続」出版。
収録作品:鈴 / コネコメガニ / 狂い桜 / 心の闇 / ホはホラー映画のホ / 深泥丘三地蔵 / ソウ / 切断 / 夜蠢く / ラジオ塔
前者は2011年、後者は2013年、MFダヴィンチ文庫より文庫化。
現在も雑誌「幽」にて連載中。
○あらすじ
主人公の「私」の記憶があいまいになる時、もうひとつの京都、「深泥丘」は姿を変える。
幻想、妖艶、恐怖……あらゆる怪奇に満たされた町で、人々は平凡な生活を送る。
そこは現実なのか、夢なのか。
美しい怪談絵巻が紐解かれる時、あなたは何をみるのか……。
○感想
幻想的な文章と、どこか寒気のする空気が、とても美しく感じる一作であると思う。
分類的には、ホラーに入るのかもしれないが、どちらかと云えば幻想小説のような雰囲気。
直接的な怖さではなく、不思議な感覚に伴う悪寒が読者を襲う。
といっても、中にはちょっと笑える話もあって、
「深泥丘奇談・続」に収録されている「ソウ」なんかは、ダジャレに近いもの。
結末がはっきりとしていなくて、読む人にとってはイライラとするものかもしれないが、
途中で消えゆく感じがまた意味深で、深く読めば読むほど面白い。
私が好きな話は、「開けるな」と「ラジオ塔」である。
綾辻さんの作品はミステリからホラーまで、幅広いので読み込むと面白いです。
次は、何を紹介しましょうか……。