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【赤い夢の迷宮】日本文学奇書に挑戦!【第十四回】

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by jim crossley

 

夢うつつのうちに、迷い込んでしまった不思議な館。異様な空間と、それぞれの思惑を持った9人。

狂気が世界に舞い降りる時、そこは迷宮と化し、もう抜け出すことはできない……。

 

「赤い夢の迷宮」(勇嶺薫著)。異色の作家が紡ぎ出す世界を、今日は紹介します。

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講談社ノベルス

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講談社文庫

 

○作者について

勇嶺薫(またははやみねかおる) 1964年~

小学校教師だったが、本嫌いの子供のために小説を書くうちに、そちらを本業にしてしまう。

1989年、「怪盗道化師」が第30回講談社児童文学新人賞に入賞、デビュー。

 

普段は「はやみねかおる」名義で「名探偵夢水清四郎シリーズ」、「怪盗クイーンシリーズ」、「都会のトム&ソーヤシリーズ」など、様々なシリーズを手掛けている。

「勇嶺薫」名義なのはこの一作のみ。

それぞれのシリーズで、世界観を共有しており、違ったシリーズに同一人物が出ることもしばしば。

「Good night and have a nice dream」が決め台詞。

 

○作品について

2007年、講談社ノベルス

2010年、講談社文庫より出版

 

○あらすじ

25年前、「OG」という不思議な大人の元に集った小学生7人。

そして現在、突然「OG」から同窓会の招待状が届く。

僕、ゴッチ、ウガッコ、ユーレイ、Cちゃん、魔女、ココア……それぞれの思惑をいだいて、大人となった7人は同窓会にやってくる。

そこには、かつてたびたび訪れたOGの別荘があり、そして、恐怖の惨劇が始まるのだった。

 

○あらすじ

もともと、「はやみねかおる」名義で子供向けの軽い文体を書く人だった。

だからだろうか、「勇嶺薫」名義で重々しい雰囲気の物語をつむいでも、どこか子供っぽさがにじみ出る作品になっている。

起こっていることは生々しく、狂気に満ちているのに、それを否定するかのような明るい文体が目を引いてしまう。

けれども、そのミスマッチがまた恐怖を加速させて、本来はミステリの筈なのだけれど、どこかホラーというか、幻想小説のような気を感じさせる。

最後には叫びだしたくなるような、そんな狂気の作品である。

トリックはとても素晴らしいと思うので、ミステリとしても楽しめるけれど、ほんらいの「はやみねかおる」と違った雰囲気を楽しむのもいいかもしれない。

 

ところで、「はやみねかおる」名義でこの夏、また新しい本が出るので本屋に急ぎましょう。

はやみね先生の本は、子供でも大人でも、誰でも楽しめる作品ですからね。

 

次は、何にしましょうか……。

 

はやみね先生のブログ→はやみねな日々

 

 

作成者: 狼蘭

2015/3/4:卒業
小説を書いてる活字中毒な人。
今一番好きな言葉―「皆、思い込みを信じて自分勝手に生きているだけなんです。なら思い直せば別の世界にいける。過去なんてものは、もうないんです。未来が無いのと同じように」(関口巽)
京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」より
余談:アニメ版関口先生が無駄にイケメンで辛い