by jim crossley
夢うつつのうちに、迷い込んでしまった不思議な館。異様な空間と、それぞれの思惑を持った9人。
狂気が世界に舞い降りる時、そこは迷宮と化し、もう抜け出すことはできない……。
「赤い夢の迷宮」(勇嶺薫著)。異色の作家が紡ぎ出す世界を、今日は紹介します。
○作者について
勇嶺薫(またははやみねかおる) 1964年~
小学校教師だったが、本嫌いの子供のために小説を書くうちに、そちらを本業にしてしまう。
1989年、「怪盗道化師」が第30回講談社児童文学新人賞に入賞、デビュー。
普段は「はやみねかおる」名義で「名探偵夢水清四郎シリーズ」、「怪盗クイーンシリーズ」、「都会のトム&ソーヤシリーズ」など、様々なシリーズを手掛けている。
「勇嶺薫」名義なのはこの一作のみ。
それぞれのシリーズで、世界観を共有しており、違ったシリーズに同一人物が出ることもしばしば。
「Good night and have a nice dream」が決め台詞。
○作品について
2007年、講談社ノベルス
2010年、講談社文庫より出版
○あらすじ
25年前、「OG」という不思議な大人の元に集った小学生7人。
そして現在、突然「OG」から同窓会の招待状が届く。
僕、ゴッチ、ウガッコ、ユーレイ、Cちゃん、魔女、ココア……それぞれの思惑をいだいて、大人となった7人は同窓会にやってくる。
そこには、かつてたびたび訪れたOGの別荘があり、そして、恐怖の惨劇が始まるのだった。
○あらすじ
もともと、「はやみねかおる」名義で子供向けの軽い文体を書く人だった。
だからだろうか、「勇嶺薫」名義で重々しい雰囲気の物語をつむいでも、どこか子供っぽさがにじみ出る作品になっている。
起こっていることは生々しく、狂気に満ちているのに、それを否定するかのような明るい文体が目を引いてしまう。
けれども、そのミスマッチがまた恐怖を加速させて、本来はミステリの筈なのだけれど、どこかホラーというか、幻想小説のような気を感じさせる。
最後には叫びだしたくなるような、そんな狂気の作品である。
トリックはとても素晴らしいと思うので、ミステリとしても楽しめるけれど、ほんらいの「はやみねかおる」と違った雰囲気を楽しむのもいいかもしれない。
ところで、「はやみねかおる」名義でこの夏、また新しい本が出るので本屋に急ぎましょう。
はやみね先生の本は、子供でも大人でも、誰でも楽しめる作品ですからね。
次は、何にしましょうか……。
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