明治を生きる貴族は、「物語」という非現実的なものに取りつかれ、狂気に取り込まれていく。
現実を生きる人たちと、幻想を生きる人たち。どれが、誰が本当の世界なのだろうか。
今回紹介するのは、「儚い羊たちの祝宴」(米澤穂信著)です。
○作者について
米澤穂信(1978年~)
2001年、『氷菓』で角川学園小説大賞を受賞し、デビュー。
その後、『インシテミル』で2008年、第八回本格ミステリ大賞、
2001年、『折れた竜骨』で第六十四回日本推理小説協会賞を受賞。
2012年、『氷菓』(古典部シリーズ)が京都アニメーションよりアニメ化、
また、『月刊少年エース』に、よしだもろへ作画で連載されている。
○作品について
2007年より、「小説新潮」にて連載。
2008年、連載された4編と、書き下ろしの1編を加えて新潮社より出版。
2011年、同じく新潮社文庫より文庫化。
○あらすじ
上流階級の女子大生達が集う読書会、「バベルの会」。
その会に集う女性たち、または周囲の関係者達がかかわる、惨劇と恐怖。
最後の一行で、世界は変わる……。
短編集。
収録作品:身内に不幸がありまして/北の館の罪人/山荘秘聞/玉野五十鈴の誉れ/儚い羊たちの晩餐
○感想
一言でいえば、キョウキ。狂気でもあり驚喜でもあり……。
「山荘秘聞」はまだ、そのどんでん返しに驚くだけの話であるから、そんなに怖くもない。
けれど、後の四つはぞっとするような話ばかり。
最後の一行でどんでん返しが分かるのだけれど、まさか、そんな……というラストばかりで。
随所にちりばめられた伏線が、また恐怖をかきたてる。
私は、「玉野五十鈴の誉れ」が一番怖い。
人の忠誠心と言うものは、かくも暴走するものなのか、という恐ろしい話である。
夜中に読むのは、出来るだけ避けたいものだ。
ホラーが苦手な人は、やめた方がいいような気がしますが。
古典的ミステリが好きな人なら、楽しめると思います。