by Paul
とある精神病棟に棲む、三人の患者。
彼らが求めるものは、自由なのか、それとも無なのか……。
第十八回、今回は「フリークス」(綾辻行人著)を紹介します。
○作者について
前回の「深泥丘奇談」の記事を参照
○作品について
1996年、光文社カッパ・ノベルスより出版
200年、光文社文庫より出版
2011年、角川文庫より出版。
光文社ノベルスの装丁は、京極夏彦氏
短編集。収録作:夢魔の手-三一三号室の患者-/四〇九号室の患者/フリークス-五六四号室の患者-
○あらすじ
とある精神病院に入院中の三人の患者にまつわる物語。
一人は、毎日奇妙な儀式を行い罪を償う患者。
一人は、事故のせいで記憶喪失になった患者。
一人は、病院の奥から声が聞こえると、その声を小説にしたためた患者。
彼らが見る真実、世界とは何なのだろうか……。
○感想
一話目(夢魔の手)は二段のオチがあり、伏線が緻密でとても驚かされる。
二話目(四〇九号室の患者)は、主人公がしたためる日記に狂気を感じ、そして最後の場面に涙するほどの悲しい話。
三話目(フリークス)は、一風変わった謎解きの話であり、物語の中で描かれた小説の謎と、物語の中の謎とが完璧にリンクし、大いなる驚きが生まれる。
どれもこれも、ありそうでなさそうな、現実と幻想の狭間の物語である。
幻想かと思えば、現実的な話であり、現実かと思えば、幻想を見ているとしか思えない話。
ゆらゆら揺れる感覚が、気持ちいいけれど、読み込むと酔いそうになる。
この物語の裏は、未だ読み取れない。
綾辻行人氏の新作、「Another エピソードS」が角川書店より7月31日発売です。
あのアニメ、映画にもなった「Another」のもう一つの夏のお話。
見崎鳴が出会った、悲しい幽霊のお話です。
ぜひ、アニメから、映画から、そして本から入った方も読んでみてください。
余談ですが、いま「みさきめい」って打った時に一発で「見崎鳴」と出たことに感激しました。