「君、太宰つてのは、おそろしくいやな奴だぞ。さうだ。まさしく、いや、な奴だ。嫌惡の情だ」
今回紹介するのは、「ダス・ゲマイネ」(太宰治著)です。
◯作者について
太宰治
前回の「トカトントン」の記事参照
◯作品について
1935年、雑誌「文藝春秋」に掲載
1988年、新潮社文庫より表題『走れメロス』として出版。
収録作:走れメロス/富嶽百景/ダス・ゲマイネ/女生徒 その他
1998年、筑摩書房より、表題『太宰治全集2』として出版。
収録作:晩年/ダス・ゲマイネ/虚構の彷徨
青空文庫にも収録。
題名の「ダス・ゲマイネ」とは、ドイツ語で「通俗性、卑俗性」を表す。
◯あらすじ
好きな人によく似た女性を眺めて暮らす「佐野次郎」は、ある日東京音楽大学に通っているという「馬場」に出会う。彼は、『海賊』という同人誌を作ろうと佐野に持ちかけ、絵描きの「佐竹」と新人作家(笑)の「太宰治」を連れてくるが……。
◯感想
人間の卑屈さがよくわかる、太宰治らしい薄暗い作品。
『人間失格』のような真っ暗ではないが、やはりどこか虚無的な、死という観念が作品全体を支配している。
けれども、そこに「太宰治」というキャラクターが出てくることで、死の観念は少し和らぐ。
作品の中の太宰治と、現実の太宰治の共通点と違い、それを見つけることも楽しい。
太宰治は何を考え作品を書いているのか、そんなものが少し見ることのできる作品だとおもう。
ダザイストになるため日々邁進中。太宰治の作品は深いので、読み込めば読み込むほど頭に新たな観念が生まれます。