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スタジオジブリとカラーが合流して「風の谷のナウシカ新劇場版」制作へ……という妄想

 9月6日、宮崎駿監督が都内で引退記者会見を行う。宮崎監督が「引退」を口にするのはこれが初めてではないものの、1941年生まれなので御年72歳。映画作りに密着したドキュメンタリーを見ると過酷な仕事であることがうかがえ、自らの生き方を主人公・堀越二郎に託した部分のある自伝的作品「風立ちぬ」が最終作と位置付けても、なんらおかしくはない。
 そこで考えるのは、ジブリは今後どうするのか、宮崎駿は隠遁するのか、ということだ。
 東京新聞はアニメ評論家の藤津亮太さんに話を聞きにいっている。

東京新聞:宮崎駿監督引退 どうなる「ジブリ」:放送芸能(TOKYO Web)

 この記事の中で、藤津さんはジブリの今後が「ゼロベースになった」「次世代スタッフが製作に専念できる環境をつくるのではないか」と予測している。
 実際問題、スタジオジブリには従業員が300名いるのに「宮崎監督が引退するから、解散」ってわけにはいかない。「風立ちぬ」のあとには高畑勲監督の「かぐや姫の物語」が控えているが、高畑監督はそもそも宮崎監督の先輩で77歳。前作からのスパンを考えると、これが長編としては最終作になるだろう。
 ジブリにとっての後継者問題というのは新しい話題ではなくて、東京新聞の記事でも触れられているけれど、「ハウルの動く城」はもともと細田守に監督の大命が下りながらも企画が頓挫し、結局宮崎駿の手に戻った。宮崎駿の長男・吾郎は「ゲド戦記」で最初にドラゴンと少女のイラストを描いて原作者を喜ばせたがそこがピークで映画自体の出来には激怒されてしまった。その次に「コクリコ坂から」を作ったが、こちらもジブリとして期待されたヒットには至らなかった。このほかに、ジブリ内部の人材として米林宏昌が「借りぐらしのアリエッティ」を監督しているが、こちらも期待したほどには及ばず。そもそも、「スタジオジブリの新作」という時点でのハードルが高すぎる、というのは大きな問題なのだろう。いまだに、「耳をすませば」の近藤喜文が夭逝していなければと言われ続けている。

 だが今回、「風立ちぬ」の制作の中では、堀越二郎役を演じた庵野秀明が「ナウシカ2」を作りたいと宮崎駿に頼み込んで、「作りたいなら作ればいいよ」とOKした話がこぼれてきている。もともと庵野秀明は「風の谷のナウシカ」のころにスタジオジブリで手伝いをしていて巨神兵シーンの原画を担当したことが知られている。ただ、庵野は巨神兵は描けてもクシャナは上手く描けず、宮崎駿がすべて修正したらしいけど。
 宮崎駿にとって庵野秀明は愛弟子なんかじゃない、という意見も目にした。しかし、今回「風立ちぬ」で堀越二郎の声を決めるときに、「素人っぽい声がいいよね」というところから庵野の名前を出したのは鈴木敏夫プロデューサーだが、宮崎は「庵野か、いいかもしれないね」と即座にいい反応を見せ、スタジオで試すとなったときにも「決まるといいなぁ」と期待するようなところを見せている。「息子を見るような目で」とまではいわないが、庵野を必要な人材だとみているように思えた。そもそも、ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qと同時公開された「巨神兵」で、庵野は宮崎の協力を仰いでいる。

 庵野秀明は「宮さんに言われちゃ断れない」と声優オファーを受諾したが、あくまで妄想として飛躍させてもらうと、ナウシカ2制作の話と交換条件的に成立していてもおかしくはないのではないか。宮崎はもう自身では長編映画が作れない、宮崎がかつて映画化した「風の谷のナウシカ」は映画よりも向こう側の話が5巻分ほどある、庵野秀明はナウシカが作りたい……と作品が成立しそうな条件を置いておいて、地に足が付いたところでいえば、ドワンゴの川上会長の存在がある。この人、「プロデューサー見習い」という役職で鈴木敏夫についてスタジオジブリでちょっとした仕事をしているのだが、2013年8月ぐらいになって、カラーの取締役に名前を連ねているのが発見された。カラーというのは庵野秀明がガイナックスから独立して作ったスタジオで、ヱヴァンゲリヲン新劇場版を制作しているスタジオである。
 ジブリのプロデューサーが、カラーの取締役。親会社の役員が子会社の社長になるならともかく、ジブリとカラーはアニメスタジオであることは共通していても、母体は別物である(日テレと関係が深いという要素はある)。なら、川上氏がなんらかの役割を果たして、ジブリとカラーの統合が行われる、ということも起きえるのではなかろうか。ジブリもカラーも、今作っているヤツの次の仕事は(グロス請けだとか除くと)大きなものはないはずで、ここにナウシカ2がやってきてもおかしくはない。
 庵野秀明が新生ジブリ(か新生カラーか)を率いて「風の谷のナウシカ新劇場版」を作り、その監修をしつつ宮崎駿は同時上映用の趣味の短編を作る……あまりにも夢すぎるけれど、そんな夢みたいなことが起きたっていいんじゃないかな、と思っている。