by relux.
「いつでもチェックアウトは出来ますが、ホテルから去ることはできません」
取り壊し寸前の小さな民宿、沖縄に佇む優雅なホテル、冬のさびれた温泉宿、都心のありふれたシティホテル……。
様々な宿で起こる犯罪と、臨床犯罪学者&推理小説家のコンビの記録。
今回紹介するのは、「暗い宿」(有栖川有栖著)です。
○作者について
有栖川有栖(1956~)
「第十一回 赤い月、廃駅の上に」の記事をご参照ください
○作品について
2001年、角川書店より出版。
2003年、角川文庫より出版。
短編集
収録作:暗い宿/ホテル・ラフレシア/異形の客/201号室の災厄
○あらすじ
「フィールドワーク」と称して、犯罪を研究―もとい探偵じみたこと―をしている、「臨床犯罪学者」、火村英生と、推理小説作家、有栖川有栖のコンビが遭遇した事件の記録。
・暗い宿
取り壊し寸前の民宿に泊まった有栖川有栖。
夜中に、なぜか地面を掘る音が聞こえ、不審に思っていた。
そして、その宿の下から白骨死体が発見され……。
・ホテル・ラフレシア
石垣島に立つ、ホテル・ラフレシア。
そこで、「ミステリーナイト」というイベントが開催されるということで、有栖川有栖と、火村英生はこのホテルを訪れていた。
そして、彼らはひと組の夫婦と出会い……。
・異形の客
小さな温泉宿に、包帯で顔を隠した男が泊まりにくる。
有栖川有栖は、そこで有名な整形クリニックの院長と出会う。
そして、その宿の離れで、男の屍体が見つかり……。
・201号室の災厄
有名ミュージシャンと、偶然同じホテルになった火村英生。
夜中、そのミュージシャンの部屋に死体が倒れているのを見てしまう。
無理矢理部屋に閉じ込められ、「この謎を解いてくれ、俺が殺したんじゃないんだ」と言われた火村は……。
○感想
私が一番好きな話は、「ホテル・ラフレシア」。
アメリカのロックバンド、「Eagles」の曲、「Hotel California」をモチーフにした話で、とても切ない。
その、「Hotel California」の最後に、こんな歌詞がある。
『あなたはいつでもチェックアウト出来ますが、ホテルから出ることはできません』
その歌詞の通り、「ホテル・ラフレシア」の話の中では、ホテルから出ることは出来なかった。
閉じ込められたということではないのだけれど……、本当にせつない。
そして、次に好きなのは「201号室の災厄」
犯罪心理学者、火村准教授の人柄がよく出ている話である。
死体を前にしても、いたって冷静で、淡々と推理を語る。
口では鋭い言葉を吐きながらも、心に深い傷を負っている。
そんな火村准教授が、私は大好きだ。
「Hotel California」は、歌詞がとても不思議で、一度聞くと中毒になるほど。
この本をよんで、私はこの曲にどはまりしました(もちろん本にもどはまりしましたよw)