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【暗い宿】日本文学奇書に挑戦!【第二十九回】

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by relux.

 

「いつでもチェックアウトは出来ますが、ホテルから去ることはできません」

取り壊し寸前の小さな民宿、沖縄に佇む優雅なホテル、冬のさびれた温泉宿、都心のありふれたシティホテル……。

様々な宿で起こる犯罪と、臨床犯罪学者&推理小説家のコンビの記録。

 

今回紹介するのは、「暗い宿」(有栖川有栖著)です。

 

k2角川書店

 

k3角川文庫

 

 

○作者について

有栖川有栖(1956~)

第十一回 赤い月、廃駅の上に」の記事をご参照ください

 

 

○作品について

2001年、角川書店より出版。

2003年、角川文庫より出版。

 

短編集

収録作:暗い宿/ホテル・ラフレシア/異形の客/201号室の災厄

 

 

○あらすじ

「フィールドワーク」と称して、犯罪を研究―もとい探偵じみたこと―をしている、「臨床犯罪学者」、火村英生と、推理小説作家、有栖川有栖のコンビが遭遇した事件の記録。

・暗い宿

取り壊し寸前の民宿に泊まった有栖川有栖。

夜中に、なぜか地面を掘る音が聞こえ、不審に思っていた。

そして、その宿の下から白骨死体が発見され……。

 

・ホテル・ラフレシア

石垣島に立つ、ホテル・ラフレシア。

そこで、「ミステリーナイト」というイベントが開催されるということで、有栖川有栖と、火村英生はこのホテルを訪れていた。

そして、彼らはひと組の夫婦と出会い……。

 

・異形の客

小さな温泉宿に、包帯で顔を隠した男が泊まりにくる。

有栖川有栖は、そこで有名な整形クリニックの院長と出会う。

そして、その宿の離れで、男の屍体が見つかり……。

 

・201号室の災厄

有名ミュージシャンと、偶然同じホテルになった火村英生。

夜中、そのミュージシャンの部屋に死体が倒れているのを見てしまう。

無理矢理部屋に閉じ込められ、「この謎を解いてくれ、俺が殺したんじゃないんだ」と言われた火村は……。

 

 

○感想

私が一番好きな話は、「ホテル・ラフレシア」。

アメリカのロックバンド、「Eagles」の曲、「Hotel California」をモチーフにした話で、とても切ない。

その、「Hotel California」の最後に、こんな歌詞がある。

『あなたはいつでもチェックアウト出来ますが、ホテルから出ることはできません』

その歌詞の通り、「ホテル・ラフレシア」の話の中では、ホテルから出ることは出来なかった。

閉じ込められたということではないのだけれど……、本当にせつない。

 

そして、次に好きなのは「201号室の災厄」

犯罪心理学者、火村准教授の人柄がよく出ている話である。

死体を前にしても、いたって冷静で、淡々と推理を語る。

口では鋭い言葉を吐きながらも、心に深い傷を負っている。

そんな火村准教授が、私は大好きだ。

 

 

「Hotel California」は、歌詞がとても不思議で、一度聞くと中毒になるほど。

この本をよんで、私はこの曲にどはまりしました(もちろん本にもどはまりしましたよw)

 

 

The Eagles Hotel California

作成者: 狼蘭

2015/3/4:卒業
小説を書いてる活字中毒な人。
今一番好きな言葉―「皆、思い込みを信じて自分勝手に生きているだけなんです。なら思い直せば別の世界にいける。過去なんてものは、もうないんです。未来が無いのと同じように」(関口巽)
京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」より
余談:アニメ版関口先生が無駄にイケメンで辛い