「だから作家になんてなるもんじゃない!」
東野圭吾、これが裏のライフワーク 出版業界の内幕を暴露する連続ドラマ
今回紹介するのは、「歪笑小説」(東野圭吾著)です。
○作家について
東野圭吾(1958年~)
前回の記事 【名探偵の掟】日本文学奇書に挑戦【第二十回】 をご覧ください
○作品について
2012年、集英社文庫より出版。
短編集。
収録作:伝説の男/夢の映像化/序の口/罪な女/最終候補/小説誌/天敵/文学賞設立/ミステリ特集/引退発表/戦略/職業、小説家
○あらすじ
「スライディング土下座」を武器に、数々の難攻不落と思われていた作家から原、稿を取る伝説の編集者。
美人編集者に一目ぼれ、振り回されるさえない作家。
新しい文学賞を設立するも、思わぬ事態にあわてふためく編集者。
「結婚を前提に」と娘が連れてきた新人作家に、苦い顔をするサラリーマン……。
出版業界と作家の裏事情、リアリティとブラックジョーク溢れる文壇の苦悩を描いた、12本の短編。
○感想
パロディ(?)というか、名前のもじりが溢れていて、笑うところは笑えるのだけれど、苦笑い連発の小説だった。
メインに出てくる出版社にしても、「灸英社」とか、「剛談社」とか……。
作家たちの名前も、「玉沢義正」、「糸辻竹人」などなど。
どれも、実際にある出版社、有名な作家の名前のもじりである。分かると、とても嬉しいし、笑える。
しかし、話はどれもシビアであり、読んでるともう苦笑いしか出来ない。
出版社ってこんなことするんだ、作家ってこんなことに頭を悩ませてるんだ、作家と出版社の関係って、こんなんだったんだ……。
そんな驚きの連発で、出版業界がいかに大変かがよくわかる。
小説としても楽しめるが、妙にリアリティがあって、出版業界のことを学ぶのにも役に立つはずだ。
読み終わった後に、きっと多くの人はこう思うだろう。
「やっぱり、作家になんてなるもんじゃない!」と。
巻末には、作品ないに登場する本を紹介する広告が書かれている。
東野圭吾氏のジョークが詰まった、偽物の広告なので、騙されないように……(苦笑)