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by Grant MacDonald

これこそ奇書!私が求めていた奇書である!

衝撃のラスト、坂を転がり落ちていくような不快な感覚。

物語に吞まれ、取りつかれ、ページを捲る手が止まらない……。

子どもたちの、閉鎖された空間。陰湿ないじめが、精神を蝕んでいく。

 

今回紹介するのは、「ぼくはお城の王様だ」(スーザン・ヒル著)です。

b1講談社

 

○作者について

スーザン・ヒル(1942年~)

イギリスのフィクション、およびノンフィクション作家。

1970年、『ぼくはお城の王様だ』を発表。1971年、サマセット・モーム賞を受賞

1985年、エッセイ『私は産むー愛と喪失の四年間』を発表。イギリス内で大反響を生む。

2012年、大英帝国勲章を受章

 

 

○作品について

1970年、『I’m the King of Castle』出版

2002年、邦訳『ぼくはお城の王様だ』(幸田敦子訳 )を講談社より出版

 

○あらすじ

住み込み家政婦で働く母親と一緒に、フーパー氏の住むウェアリングス館に引っ越してきたキングショー。

フーパー氏の息子のエドマンドは、キングショーと同い年で、傲慢で、粘着質で、嘘つきなやな奴。

自分の立場を最大限に使って、エドマンドはキングショーをいじめぬく。

毎日毎日、家でも寄宿学校でも外出先でも……。

母親にも信じてもらえないキングショーは、絶望の淵に追い詰められていく。

自分を殺すか、相手を殺すか。

少年たちの心の闇。待ち受けるのは、どんな結末なのか。

 

○感想

ぼくのせいだ、やったやった、ぼくだ、ぼくのせいなんだ。そして、突き上げてくる勝利感に身を震わせた。

最後のページのこの言葉を読んだ時、頭を金づちで殴られたような感覚に襲われた。

文章自体は、やさしく、読みやすい。

時々一人称が突然変わるので、そこを注意しながらだったら、子供向けかとも思える文体だ。

けれども、内容自体は残酷で、恐ろしくて、絶望に満ちている。

エドマンドの執拗かつ無計画ないじめは、効果を最大限に発揮して、キングショーを追い詰めていく。

子供だからといって侮れない。自分の立場をしっかり理解し、どんな手でもやってのける。

 

昨今、日本ではいじめが問題になっている

そんな時だからこそ、この本を読んでほしい。

いじめというものが、どんなに人を追い詰めるものなのか。

本人にそんな意図がなくても、思わぬ結末をよびこむものだと。

巧みな文章表現で、この本は分かりやすく教えてくれている。

結末におののく人なら、いじめと言うものがいかに残酷か、分かってくれるに違いない。

そして、いじめを考えるきっかけになると思う。

 

 

 

 

 

投稿者: 狼蘭

2015/3/4:卒業 小説を書いてる活字中毒な人。 今一番好きな言葉―「皆、思い込みを信じて自分勝手に生きているだけなんです。なら思い直せば別の世界にいける。過去なんてものは、もうないんです。未来が無いのと同じように」(関口巽) 京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」より 余談:アニメ版関口先生が無駄にイケメンで辛い