銃撃が2発鳴り、夏の終わり、美しき洋館で、惨劇が始まる……。
巨匠、筒井康隆が送る最高の騙し絵を、かわしきれるか!
今回紹介するのは、「ロートレック荘事件」(筒井康隆)です。
○作者に付いて
筒井康隆(1934~)
大阪府立春日丘高校から、同志社大学へ入る。
1960年、父、弟とともにSF同人誌、『NULL』を創刊。
江戸川乱歩の目にとまり、1960年、彼が創刊する『宝石』にて短編を発表。デビュー。
小松左京などと交友。
1981年、『虚人たち』で第9回泉鏡花文学賞を受賞
1989年、『ヨッパ谷の降下』で第16回川端康成文学賞を受章
2002年、紫綬褒章受章
主な作品に、『時をかける少女』 『聖痕』など
高校、大学時代演劇を続け、過去に俳優活動、劇作家としても活動している。
○作品に付いて
1990年、新潮社より出版
1995年、新潮社文庫より出版
○あらすじ
夏のある日、「おれ」とその友人は「ロートレック荘」と呼ばれる木内文麿氏の別荘に招待された。
その屋敷には、木内氏の妻と娘典子、彼女の同級生である牧野寛子、立原絵里、絵里の母の五月未亡人、そして使用人の馬場金造がひと時の休暇を楽しんでいる。
そのうち、3人の少女と、「おれ」の縁談などの話で盛り上がる。
しかし、ふいになる銃声。皆が駆け付けると、牧野寛子が銃弾で打ち抜かれており……。
○感想
巨匠、筒井康隆氏の作品はかねてから読もうと思っていたものの、中々手をつけられず、初めが推理小説、というちょっと異様な入り方になってしまった。
推理小説と言っても、探偵役がいるわけではなく、ちりばめられている伏線に、読者が気づくがどうか、という作品だ。
この作品はトリックがトリックなので、あんまり内容は詳しく言えないのがちょっと残念。
最後に犯人が自白するのだが、その自白の内容が懇切丁寧で、何ページの何行目はこう言うことで、何ページの何行目はこう言う伏線が張っていて……と、いちいち書いてくれている。(絶対に最初に読んじゃダメ!)
その自白に沿って、ページをひっくり返しながらもう一度読むと、ものすごくダメージを受ける。
あからさまな伏線が張ってあるのに、なんで気付かなかったんだ、と頭を抱えたくなる。
それほどまでに、巧妙で、緻密に作られた罠が、この作品にはある。
その罠に、引っかからないでかわせる人は、相当凄いと私は思う。
ただ、(少しネタバレなので以下伏字)途中の視点移動だけは反則技かな、と思ったり(ここまで)