by Nattu
僕がマユと出会ったのは、代打で出席した合コンの席。そこで僕は、恋に落ちたんだ。
「マユ」と「たっくん」の甘く切ない恋物語は、最後の最後で一変する。
今回紹介するのは「イニシエーション・ラブ」(乾くるみ)です。
○作者に付いて
乾くるみ(1963年~)
1998年、『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞、デビュー。
1998年、『匣の中』は、日本四大奇書とも言われる竹本健治の『匣の中の失楽』のオマージュ。
2005年、『イニシエーション・ラブ』でこのミステリーがすごい!2005に選ばれる
シリーズ物に、『タロットシリーズ』(それぞれが独立しているが、全てタロットカードをモチーフにしている)や、
『林四兄弟シリーズ』 『カラット探偵事務所シリーズ』などがある。
○作品に付いて
2004年、原書房より出版
2005年、文春文庫より出版
2005年本格ミステリベスト10で、第六位に入っている。
『タロットシリーズ』の中の一作で、6番「恋人」をモチーフにしている。
sideA、sideBの二編からなっている。
○あらすじ
・sideA
合コンの席で出会い、恋に落ちた大学生の「たっくん」と、二十歳の歯科衛生士、「マユ」
二人は海にいったり、それぞれお気に入りの本を交換したりと、順調に愛をはぐくんでいく。
クリスマスは高級レストランで、ディナーをしたいと思っていた時……。
・sideB
社会人になった「たっくん」は、「マユ」を大切に思うがあまり受かっていた大企業をけって、静岡の中小企業に就職した。
しかし、そこで幹部候補生となり、東京の本社に行くことになってしまう。
しぶしぶ仕事を取り、しばらくは「マユ」と遠距離恋愛を続けていたものの……。
○感想
最初の印象は、「ベタなラブストーリー」。
二人の男女が出会って、恋に落ち、デートをし、クリスマスを共に過ごし、といった展開で、面白い、とはいえない。
しかし、sideBに映ると、物語は動く。
遠距離恋愛にありがちな展開になり、どっちかというとミステリーというかラブストーリーかな、と読みながら思っていた。
しかし、最後の二行(絶対先に読んじゃダメ!)を読んだ瞬間、口がふさがらなくなってしまった。
まず意味が理解できなくて、思考が止まった。
封印が融けて、解説を読んでみると、だんだん頭が活性化してくる。
解説に書かれているヒントを頼りに、本をひっくり返してみると、伏線が出るわ出るわの状態で、物語が全く違う様子に変わった。
二回目に本を閉じたときに、思ったこと「騙された、してやられた!」
舞台設定が、1986年ごろだと承知して読むと、もしかしたら気づくかも……?