「私は、鏡の世界の住人なのだ」
鮎田冬馬の手記。そう書かれたノートを持って、出版社を訪ねてきた男。
記憶喪失の彼の過去に起きた、不可解な殺人事件とは?
今回紹介するのは、「黒猫館の殺人」(綾辻行人)です。
○作者について
綾辻行人(1960~)
「【深泥丘奇談】日本文学奇書に挑戦!【第十三回】」の記事をご覧ください。
○作品について
1992年、講談社ノベルスより出版
1996年、講談社文庫より出版
「館シリーズ」第六巻目
○あらすじ
作家鹿谷門実と、編集者江南孝明を訪ねてきたのは、記憶喪失の男だった。
彼は、「鮎田冬馬の手記」と書かれたノートを手にし、「自分が何者か、探ってほしい」と二人に依頼。
手記に書かれていたのは、一年前のこと。「黒猫館」という館での、とある殺人事件。
手記を元に鹿谷達は、もともとの館の所有者であった天才学者、天羽達也氏の生涯を追う。
手記が秘める、驚きの真実とは? トリックがトリックでない不思議な館、黒猫館で猫が鳴く……。
○感想
本件は、殺人事件の謎を解くものではない。
黒猫館と言うのははたして何なのか、を探る作品である。
この物語の中で、黒猫館とは、緻密な伏線で塗り固められた存在。
「手記」が進むにつれ、だんだんと明らかになっていくその姿は、霧に包まれたようにぼやけている。
前代未聞のトリック。黒猫館に掛けられた魔法(呪いかな?)
その奇妙な館が秘める秘密が明らかにされるとき、皆本当にびっくりするだろう。
殺人事件の方は、やけにあっさりしてるものなので、そんなに腐心しなくて大丈夫。
それよりも、手記を隅から隅まで読むことが、黒猫館への道筋である。
気をつけろ、最大の伏線は、物語の中以外に―。
最近、とあることをしたので、この作品を再読。
ヒントはこのサイトの中にも・・・・・・ある?