「どうして、犬は人間よりも鼻が利くか知ってるか」
「いや、知らない」
「それはだな―犬は、顔の半分が鼻だろ」
今回紹介するのは、「片眼の猿-One-eyed monkeys-」(道尾秀介著)です。
○作者について
「【月と蟹】日本文学奇書に挑戦!【第二十四回】」をごらんください
○作品について
2007年、新潮社より出版
2009年、新潮社文庫より出版
○あらすじ
その筋では有名な、盗聴専門の私立探偵、三梨幸一郎。
楽器メーカーの特許を巡って仕事をしている最中、彼は冬絵と名乗るある女に出会う。
同業者だと明かした彼女は、掛けているサングラスを絶対に外そうとしない。
特殊な耳を隠すため、いつもヘッドホンをつけている彼は、彼女に親近感を抱き、事務所に招くことにする。
そんなある日、楽器店を調べている時、偶然殺人を『聴いて』しまった彼は―。
○感想
先入観と言うものは恐ろしい。
思い込んでいる物がひっくり返されると、心臓をわしづかみにされたような感覚に襲われる。
ところどころに張られている伏線も、すらっと読み流してしまうほどの軽い文体。
ベタなアクションあり、恋あり、個性的な登場人物あり、ベタな展開あり……。
一見すると普通のアクション、というか物語に見える。
しかし、そこはミステリの名手、道尾先生。
クライマックスで明かされる謎は、もうたまげてしまいそうになった。
「くそ、せこいわ!」と本を叩きつけたくなるように、あからさま過ぎて、しかし気付かないこの微妙なラインを行くところがまた何とも言えない快感をもたらしてくれる。
冒頭から騙されていたなんて、もう何を信じればいいのやら……。
余談ですが、伊坂幸太郎先生と、道尾秀介先生の作品って、どこか似ているなと思いませんか。
ベタなミステリ(殺人×探偵みたいな)ではないけど、精巧なミステリとか。
アクション系とか、ちょっと暗い話とか。
なんか、文体とか登場人物も似てるんですよね。なんででしょうか……。
まさか、一人二役とか……は冗談ですけど。
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伏線!好物!春休み読もうっと