2014年4月1日、Google提供の無料Webメールサービス【Gmail】が2004年4月1日のテスト版リリースから10年を迎えた。いまや世界で4億人のユーザーがいるといわれるGmail、その開発段階の秘話や今後の課題などをTIME誌ネット版がコラムとして紹介している。
当時の常識である数MBから数百MBという容量を大きく越えた1GBというサービス提供の発表に加え、プレスリリースの「Googleサーチエンジンをベースにした高速な検索性能」「ツリー構造のメールを同じ画面で表示」「スパムフィルタ」などのそれまでのフリーメールの常識を覆した項目の発表に、エイプリルフールのネタだろうと取り合わないユーザーは多かったという。
■開発段階
その後実際にサービス提供が開始されて、ネタではないと発覚したGmailだがリリースされるまで開発に要した期間はなんと3年だという。その間、社内の様々な部門から「Gmail不要論」を浴びた。
「GmailはGoogleのエンジニアは業務時間の20%を仕事以外のことに使ってよいとされる20%ルールが生み出した最たるもの」と言われるが、実際開発にあたったポール・ブックハイト氏はそれは誤りであり「最初から会社の業務としてメール開発を行った」と語っている。彼はGoogleの23番目の従業員で、1999年に入社して2001年8月からGmailの開発に携わった。Gmailの起源は彼が入社前の1996年頃に開発したウェブメールのソフトウェアだった。彼が自分のPCにインストールしたメール検索エンジンを同僚に見せたところ同僚に自分のPCにもインストールしてほしいとの要望を受けたのをきっかけにGmailのサービスは形づくられた。
しかしGoogleが誇る高性能な検索エンジンを活用するためにはそれにふさわしい規模の保存容量が不可欠、よってメールが永遠に残されるメールサービスを構築するため1ユーザーあたり1GBという大容量が提供されることになった。
当時Googleは「他社にない高性能な検索エンジン」をアイデンティティとしていたが、その領域から逸脱したウェブメールの進出は反対意見が多く、その多くは「検索エンジンと関係がない」「Microsoft等がGoogleを潰しにかかる口実を与えることになる」というものだった。
Gmailの最初のプロダクトマネージャーを勤めたブライアン・ラコウスキー氏は当時のGoogleが一般ユーザーの求めるものと程遠いものを開発していたことに困惑したという。それでもエンジニア達は「自分のたちの感じる問題は将来一般ユーザーが感じる問題になる」と考え、自分たちが満足のいくサービスを作り上げることに専念した。
開発がスタートしてから2年が経過してもGmailのフロントエンドデザインは原始的な状態のままだった。その頃チームに加わったインターフェース担当のケビン・フォックス氏は「Googleらしさ」をGmailの見た目に加えることの重要性を認識していたが明確なビジョンは持っていなかった。当時Googleが提供していたのは検索エンジンであるGoogleとスタートしたGoogle Newsだが、それらはウェブ「サイト」であるのに対し、Gmailはウェブ「アプリ」だったからだ。
そのデザインプロセスについては大きく3つの段階を経た後に、現在とほぼ同じコンセプトのデザインにたどり着いたという。
当時他社のウェブメールは使い勝手がいまいちだった。そんな中、Gmailはインタラクティブ性の高いJavaScriptを活用しまインターフェースの構築により従来にはなかったユーザーにとって自然な、操作感の実現に成功する。
当時JavaScriptはまだ使い物になるかわからず、またブラウザとの親和性もまだ高くなかったため、その使用に対し反対意見は挙がったという。
Google社内からはGmailの有償化の声も挙がったが、ブックハイト氏をはじめとするたくさんのスタッフは「より広くユーザーに利用してもらうために無料で提供し、広告による売上モデルを採用する」ことを提唱したことによりプロダクトマネージャーのラコウスキー氏は「当初から決めていたとおり」にメールの内容等を元に自動で生成されるテキスト広告を画面に表示させるという方針を固持した。
広告同様にメール解析という仕組みが問題となった。他社のウェブメールのメール解析は迷惑メール対処のためのものであるのに対して、Gmailはより深く内容を解析し、効果的な広告を実現するというGoogleならではの仕組みを備えている。これが本文の内容を解析するとして議論されることは明確だったが、Googleで新商品の責任者だったジョルジュ・ハリク氏が「プライバシーの侵害と見なされるだけのものか、それとも実際のプライバシー侵害にあたるのか事前に多くの検討を行った結果、これは『感じ方の違い』に関する問題だ」と判断したことで、基本的にはプライバシー侵害をするものではないという結論に至った。
■一般公開されるまで
2004年4月上旬にはほとんどのGoogle社員がGmailを活用するようになっていた。サービス開始の日程が近づくが、肝心のサーバーと莫大なストレージ容量が確保が準備出来ていなかったため、ただでさえ準備に忙しかったスタッフはその準備に支障をきたした。最終的に開発チームが活用したのは、古すぎて社内の誰も使っていなかった300台のPentiumⅢ搭載マシンだった。マシンをセットアップ、そしてなんとか4月1日にサービスを開始した。
エイプリルフールネタではなく本物のサービスであるという認識が広まるとともに限られた人しか利用できないGmailへのアクセス権は注目を集めた(これは開発チームも意図していなかった)。そうして思いがけず人々の関心を集めたGmailは3年後の2007年に完全なサービスを公開する。
■今後の課題、問題点など
Gmailの、メール本文を広告材料に用いる手法がメール受信もしくは送信の時点でプライバシー侵害されるのかという議論が起こり、その収集方法やデータの保持期間についても疑問が投げかけられた。Gmailにまつわるプライバシー問題は今も様々な論争、係争が継続中だ。これを踏まえ、MicrosoftらプライバシーをマネタイズするGoogleを非難するグッズを販売するなど様々なキャンペーンを、展開している。
「スタートから10年!【Gmail】が開発されるまでとこれからの課題」への1件の返信
「数MBから数百MBという容量を大きえた1GB」→「大きく超えた」(?)
「当時JavaScriptはまだ使い物になるかわからなかったず」→「わからず」
「「より広くユーザーに利用してもらうために無料で提供そ」→「提供し」
誤字指摘が間違ってたらすいません、修正よろしくお願いします。