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by coincoyote

 

「村は死によって包囲されている」

外界からほぼ閉ざされた地、それが外場。

その村で起こった、奇妙な事件。

一台のトラックを皮きりに、来る日も来る日もどこかで葬式が行われる。

医者でさえも太刀打ちできない、これは……新種の伝染病なのか。

 

今回紹介するのは「屍鬼」(小野不由美著)です

 

 

○作者について

小野不由美(1960~)

1988年、『バースデイ・イブは眠れない』で講談社x文庫ティーンズハートでデビュー。

1993年、『東京異聞』が第5回日本ファンタジーノベル大賞最終候補まで残る

1995年、『十二国記』を発表。またたく間に注目を集め、ファンタジーの傑作として評価される

1999年、『屍鬼』が第12回山本周五郎賞、日本推理小説協会賞の候補になる

ホラー的な本格ミステリから、妖怪・伝説を詰め込んだハイ・ミステリーまで幅広いジャンルを執筆している。

 

 

○作品について

1989年、新潮社より出版(上・下巻)

2002年、新潮社文庫より出版(全5巻)

2008年1月~20011年7月、集英社『ジャンプスクエア』で連載 作画:藤崎竜 (全11巻)

2010年、フジテレビ「ノイタミナ」でアニメ化

公式サイトはこちら

 

○あらすじ

山の奥深くにある小さな集落、外場。

外部とは一本の国道でしかつながれておらず、周囲から隔離されている。

もともと、主に卒塔婆を作って生計を立てていたことから「外場」という名前であるこの集落は、未だ土葬の習慣が残っている。

そんな小さな村で起こった事件。

「虫送り」という神事を終えた深夜、一台のトラックがふらりと村へ迷い込み、何もせずに去って行った。

そんな小さな出来事の直後、少し離れた山の中に住んでいた老人三人の遺体が見つかる。

その事件を皮切りに、今まで平和だった村が、少しずつ異変に飲みこまれていった。

最初は貧血とも思える症状、しかし3日以内にはすぐ死んでしまう。

伝染病のような症状が村中に広がり、人々はつぎつぎと医者へ、寺へ、そして墓へと流れていく。

奇妙な症状を調べるべく、奔走していた村唯一の病院長、尾崎と寺の若御院、静信はやがて驚くべきことを知ってしまう。

「村は死によって包囲されている」。村はどうして、死に浸食されていくのだろうか……。

 

 

○感想

文庫本で読んだのだけれど、読み始めたら止まらない。手が自然に、次の巻、次の巻へとうごいてしまう。

一見するとホラーサスペンスのような気もするが、村の人々の心の中が丁寧に描写されていて、群像劇でもある作品だ。

時代は現代。パソコンではなくワープロの時代だが、携帯もあるし、テレビもある。

それなのに、外場という村は読んでいて古めかしい印象を受けてしまう。

古来より続く伝統ある神事、寺を特別視し、旧家を敬う人々、そして土葬と言う習慣。

これらがすべて、この作品のホラー要素を高めているのではないだろうか。

また、伝染病が進行していくにつれ描かれる人々の思いが、それぞれ違っていて面白い。

ところどころに挿入される寺の住職、静信の書く小説が、村の様子とリンクしているのも読みごたえがある。

結末まで一気に駆け抜けてしまいたくなるような、ページをめくるたびに坂道を転がりおちていくような、不思議な感覚が味わえるだろう。

個人的に、病院の院長、尾崎敏夫がとてもタイプである。

村人を救うために奔走し、症状が進行するたび己の非力さを悔い、そして最後まで計算高い。

穏やかな性格だが、自分の信念は妥協しない静信との対比が、また面白い。

そして、読んだ後に訪れる何とも言えない倦怠感、まるで村で怒っている症状にかかっているような……。

きっと誰もが作品を読んでいるうちに、物語に深く入り込んでしまうだろう。

そして目を見張るような真実を、目の当たりにするのである。

 

アニメ版:尾崎敏夫

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このシリーズも50回を迎えました。祝50回★

これからも時間の許す限り、本が尽きるまで続けます。

誰か本を恵んでください、よろしくお願いします。

 

投稿者: 狼蘭

2015/3/4:卒業 小説を書いてる活字中毒な人。 今一番好きな言葉―「皆、思い込みを信じて自分勝手に生きているだけなんです。なら思い直せば別の世界にいける。過去なんてものは、もうないんです。未来が無いのと同じように」(関口巽) 京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」より 余談:アニメ版関口先生が無駄にイケメンで辛い