by paul bica
人間たちが認識できるセカイと言うのは、一つしかない。セカイ、というものは数百個あるのだが、全てを見ることは絶対に不可能だ。そういう私も、未だかつて3つしか見たことがない。そして今、私の見ているセカイは少し変わっていた。
このセカイには、6つの国がある。それぞれの国は、それぞれの特徴を持ち、人は生活にいそしんでいる。そして、それぞれの国には一人一人神がいる。これは珍しいことだ。たいていは、森の神とか、海の神とかがいるだけで、国があるセカイ稀なのだ。そして、このセカイの神は人々を見守り、国を見守る。
人間たちは、神が万能な存在だと思っているらしいが、それは間違いだ。このセカイの神には少しの力しかなく、普段は漫然と「運命の歯車」を見守り、点検するだけだ。そしてある国では神をあがめ、ある国では神を忘れ、ある国では神を蔑み―。そうやってこのセカイは廻っている。
ああ、私の紹介を忘れていた。といっても私には名前がない。誰かに呼ばれるときは、役職じみたもので呼ばれている。そう、「大いなる神」と。私は、一つのセカイを統べる神だ。もちろん、セカイは数百個あるので、私と同じ役職の神は数百人いる。セカイにいる他の神をまとめ、セカイを上手く回すのが仕事だ。私の上にも偉大なる神という方がいて、その方はセカイ間の統制を維持しているのだが……。私はあったことがないのでよくわからない。
私はこれまで、3つのセカイを転々としてきた。セカイを統べるのはこれで4つ目。はたして、上手くいくのだろうか……。
次回 ②「6日 一通の手紙」
連載小説始めました。全部で8話です。テーマは「神の悩み」。最近神が出てくる小説にはまっています。というか、妖怪とか神とかが好きなんです。
それでは、よければ続き付き合ってください。狼蘭でした。