by chris@APL
本当に怖いものは何か、私はじっと考えていた。あの障子があくまで、ずっと、ずっと考えているのに……。
今回紹介するのは、「幽談」(京極夏彦著)です。
〇作者について
京極夏彦(1963年~)
「【第一回】日本文学奇書に挑戦!【姑獲鳥の夏】」をご覧ください。
○作品について
2008年、角川書店より出版
2012年、角川MF文庫より出版
2013年、角川文庫より出版
短編集
収録作:手首をひろう/ともだち/下の人/成人/逃げよう/十万年/知らないこと/こわいもの
○あらすじ
・手首を拾う
七年前に一度来た離島。そこにポツンと建つ旅館。「私」は七年前と同じ部屋に泊まることにしたのである。
・ともだち
小学校の頃、住んでいた町にやってきた「私」。ああ、あそこに友達の森田君がいる……。
・下の人
マンションの一階。耳をすませると、下からすすり泣きの声がする。
決して聞こえることのない、誰かのすすり泣く声がする。
・成人
「断っておくが、これから記す事柄が実話ではない」
そう前置かれて綴られる、ある一つの家の物語
・逃げよう
小学六年生の時の思い出。酷く厭なものに、私は追いかけられていたんだ。
・十万年
小学生のころ、右と左を反対に覚えていた。
中学生のころ、幽霊が見えるという女の子とクラスが同じだった。
そして高校生の時、僕は
・知らないこと
隣に住んでいる中原さんは、なんだかおかしい。奇妙な行動を繰り返す。
そして私は、その中原さんと壁一つ隔ててずっと寝ていたんだ。
・こわいもの
ある人が、「ほんとうにこわいもの」を譲ってくれるというので、家にやってきた。
しかし、考えれば考えるほど、何が「こわいもの」なのか分からなくなってきて。
○感想
京極先生らしい世界観で綴られる物語である。
「お化け」と言うのでもない、「妖怪」と言うのでもない、「日常」でもない。
話はまるっきり非日常なのだけれど、その非日常の世界は、私達の日常と非常に近いのではないかと思う。
ふわり、というか、ゆらり、というか、そんな擬音で表すのがふさわしい話ばかり。
余韻を残す終わり方で、いろいろな読み解き方があるはずである。
二度、三度と読まないと、世界が理解できないけれど、読みたいと思わせる作品だ。
丁度、京極先生がかく長編のプロローグばかり集めたような、そんな作品だった。
余談ですが、京極先生の作品に「コンビニ」とか出てくると、ドキッとするのはなぜなんだろうか
「【幽談】日本文学奇書に挑戦!【第四十五回】」への1件の返信
短編だ!めずらしい!
京極作品の印象的にコンビニとか現代よりのものが出てきたらビビるかも。